北海道のサシガメ


 カメムシ科のクチブトカメムシ亜科と並んで、陸生カメムシで大型の捕食性カメムシのサシガメ科Reduviidaeであるが、ほとんどが南方起源の昆虫群で、北海道には種数が非常に限られる。
 本日、念願のハネナシサシガメを採集することができたので、北海道のサシガメについて、いったんまとめて見る気になった。


 現在、北海道に産するとされるサシガメは以下のとおりである。


北海道のサシガメ類
亜科学名和名
HarpactorinaeRhynocoris leucospilus (Stal, 1859)モンシロサシガメ
Coranus dilatatus (Matsumura, 1913)ハネナシサシガメ
StenopodinaePygolampis bidentata Goeze, 1778ホソサシガメ
Oncocephalus assimilis Reuter, 1882トビイロサシガメ
EmesinaeGardena brevicollis Stal, 1871セスジアシナガサシガメ
PeiratinaePeirates turpis Walker, 1873クロモンサシガメ
SaicinaePolytoxus armillatus Ishikawa, 1998ウデワユミアシサシガメ


 今回調べてみて、始めて北海道にもビロウドサシガメが分布していることを知った。まだまだ楽しめそうである。


 左が本日採集したハネナシサシガメ。和名のとおり、翅が無く、腹部背面が裸出している。これの有翅型というレアモンも存在するらしい。見たい!
 体長は17ミリあった。標準的なサイズであろう。


 このサシガメは北海道および本州のほか、ロシア、中国、朝鮮半島に産する。以前知人よりロシア産の本種を頂いたことがあるが、これでやっと比較標本が入手できた運びとなる。惜しむらくは1個体しか採集できなかったことだ。このサシガメに限らず、捕食性のサシガメ類は、この植物を見れば採れるかもという手が使えないので、ひたすら足で稼ぐしかないのである。


 次はモンシロサシガメである。
 多くが南方系の種であるのに対して、数少ない北方系のサシガメである。北海道ではもっとも普通に見られる(はず)のサシガメである。奇しくも本日ハネナシサシガメを採集した南区簾舞での採集である。
 体長は14ミリ。
 八剣山を貫通するトンネルの入り口で、車につぶされそうなところを救出したものである。まあ、標本にされてしまったわけだが。
 ハネナシサシガメよりも早い時期から見られるようである。





 それから、「日本原色カメムシ図鑑」や日本産昆虫目録データベースでは北海道に分布しないことになっているクロモンサシガメである。本種の北海道への分布を明記したのは、日本半翅類学会の会誌Rostriaの52号に掲載された「日本産サシガメの新産地」石川忠・矢野真志(2006)である。木野田君公(2006)「札幌の昆虫」にも掲載されている。
 この個体は手稲山の側溝で採集したもので、体長は13ミリである。






 このほか、現在手元に正体の知れぬサシガメ(始末の悪いことに若虫である)が1個体有る。
 当初なにかマキバサシガメと思っていたものであるが、今回色々見てサシガメであることが判明した。
 要調査。そのうち話題にするかもしれない。