テンサイカスミカメ


 カメムシにも天才がいる。
 その名もずばりテンサイカスミカメOrthotylus (Melanotrichus) flavosparsus (C. R. Sahlberg, 1841)。
 世には様々の才能があって、その能力の発揮するところは人間に限らない。
 昆虫にも天才はいるのだ。
 つまらない冗談はもうよそう。もって生まれた才能のことを「天賦の才」などというが、実のところただ生きている、それだけで必要且十分の天賦の才に恵まれているといえるのではないか。勝手な尺度を各々で持ち寄って、能力の多少を云々する生物は人間くらいであって、生き物たちはそれぞれがプロフェッショナルであり、天才である。そうでないものは慈悲深く淘汰されるわけであるが、巨大な社会を形成し、思考や感情といった能力を発達させることで生き残ってきた人間は、淘汰されるはずの個体をも温存することで種内の多様性を保持し続けてきたようにも思える。かくいう小生は典型的な淘汰される組であるが、こうして安穏と生活させてもらって感謝の念でいっぱいである。
 閑話休題
 カメムシの天才の話であった。
 テンサイはテンサイでも、甜菜のほうである。ビートたけしのほうである。
 植物食性のカメムシは、それぞれが様々な植物に寄生して暮らしているが、このカスミカメムシはテンサイをはじめとするアカザ科の植物に依存して生活している。
 もっとも身近なところでは、河川敷などによく生えているアカザから得られる。幼虫も成虫もおおむね葉裏に定位していることが多い。涼しげな白い斑紋が、アカザ類の模様とよくマッチしており、その小ささとあいまってなかなか見つけにくい。体長は4ミリを超えない程度である。
 写真は2009年7月27日に豊平川の河川敷、東雁来の周辺で撮影したものである。まだ若虫である。