ジグモ


 たまには昆虫以外のお話をしよう。
 と言って書くのが蜘蛛の話題なのだから、いい加減にしろと言われるかもしれない。もちろんいい加減になんかしないのである。


 蜘蛛というグループも、なかなかの嫌われ者であるが、他の嫌われ者たちと同様に、感情的で理屈に合わない嫌われ方をしている生き物である。蜘蛛のことを考えれば、人間の好き嫌いが必ずしも有益無益と関係していないことがよくわかる。
 クモは、蛛形綱(クモ綱)に属する生物グループのひとつである。蛛形綱には他に、サソリ目、サソリモドキ目、ダニ目、ザトウムシ目など化石種を含めると16の目から構成されている。
 世界で4万種近くが確認されているクモ目は、日本に57科約1200種が知られており、新種も続々と発見されていると言う。極めて大きな生物グループである。
 クモをその生活型からグルーピングすると、

  • 地上を徘徊して獲物を捕らえる「徘徊性」
  • クモの巣を作って獲物を待ち伏せる「造網性」
  • 地中に作った巣で獲物を待ち伏せる「地中性」

 に分けることが一般的である。
 この中で地中性のクモは、日本国内ではほんの10種類程度のマイノリティーである。
 一般的なイメージのクモである造網性のクモは全体の6割を占め、残り約4割が徘徊性だそうだ。



 その地中性のクモの一種をここに挙げる。ピンが甘いのはご容赦いただきたい。
 藻岩山周辺の市街地で発見したものであるが、一種異様、きわめて存在感が強かったので強く記憶に残っている。「クモが世界で最も美しい生き物(のひとつ)だ」と本気で思っている小生であるが、その思いを新たにした出会いの瞬間であった。
 地中性クモの一種ジグモAtypus karschiである。
 細長い袋状の巣を作ると言うが、この時はなぜか地上を徘徊していて、巣を見ることは叶わなかった。
 後で知ったことだが、ジグモは寿命が4〜5年もあるらしい。持って帰って飼育を試みればよかったとひどく後悔したものである。


(この項の多くは日高隆敏監修『日本動物大百科8昆虫I』平凡社、1996年を参考にしている)
(撮影:2008年7月12日:藻岩山山麓市街地)