アカアシカスミカメ[異翅目(カメムシの仲間)]



 円山にて。
 若虫はよく見かけていたのだが、ようやく成虫とご対面である。
 アカアシカスミカメOnomaus lautus (Uhler, 1896)である。


 うっとりするほど美麗なカスミカメムシである。
 Onomaus属は世界に4種が知られる小規模な属で、日本にはこのアカアシカスミカメしか分布しないため、他の種と間違えることはない。
 『日本原色カメムシ図鑑』に「山地の陽の当たらない草むらで生活し、イラクサ、ウツギ、アザミ、オオバコなどの植物の花穂に多い」とある通り、写真の個体はイラクサから得られた。
 残念ながら1個体打ち止めである。


<おまけ>
 山頂で孫太郎師匠、くまさんはじめ虫屋の大先輩たちにお会いした。
 さすがは聖地円山である。



 ヒメクモヘリカメムシParaplesius unicolor Scott。沢山は採れないけれど、ササを見て歩くとちょいちょい発見できる。かわいい。
 かつて長谷川仁先生が成長越冬種である可能性を示唆されたが、生活史は解明されたのだろうか?











 おまけのおまけ。
 ボロだけど、モモブトスカシバ(たぶん)。
 かっこいい、ガです。

円山散歩

 冬季の1シーズンを放置するのは珍しくないけれど、9ヶ月も放置してしまった。
 お久しぶりです、蟲吉@残念ながら元気です。

 もう6月も終わろうというのに、冬の運動不足がいまだ解消できていません。リハビリムードで山歩きをする日々であります。ここの書き込みもリハビリムードなので、面白いことは書かさりません、あしからず。
 そんなわけで、昨日歩き撮りした円山の写真を貼る。








 カメムシで最も目に付いたのは、同じみのツチカメムシ
 前にも書いたかも知れないが、もともとは札幌に生息していなかった可能性のあるカメムシのひとつである。土の中にいるために目に付きにくいとはいえ、湿度が高いときは活発に地表を歩き回るため、記録漏れするとは思いにくい。









おまけ:シナヒラタヤドリバエと思われる。カメムシ類に寄生するヤドリバエである。

ユリイカ 詩と批評 9月臨時増刊号


 ずいぶんと久しぶりに「ユリイカ 詩と批評」を買った。考えてみれば去年南方熊楠中島らもを買って以来だ。
 総特集は「昆虫主義」。買わないわけがない。昆虫文化愛好家、いわば昆虫主義者の血が騒ぐというもんである。

ユリイカ 詩と批評」9月臨時増刊号、青土社、2009、41(11)、No.571


 まだ買ったばかりでざっと目を通しただけだが、以下に記事内容をリストしておく。

  • 養老孟司「虫のディテールから見える世界」
  • 矢島稔「生涯・昆虫案内人のつぶやき」
  • 西江雅之「わたしとむし」
  • 長野敬「「ムシ環境」のうつろい」
  • 奥本大三郎×アーサー・ビナード古今東西・昆虫文学大放談!」(対談)
  • 秋山亜由子「蝶」(マンガ)
  • 細馬宏通「行動の来歴、個体の来歴」
  • 河野和男「虫屋が手にする不思議と学者が唱える学理」
  • 内山昭一「セミ幼虫は燻製がうまい!?」
  • 手塚治虫「治虫少年の昆蟲研究ノート」(カラー図版)
  • 塚本珪一「昆虫の創る風景 二一世紀・昆虫たちは?」
  • 池田清彦「「マイナーな普遍」としての虫の楽しみ」
  • 泉麻人「TOKYO昆虫事情 青山のカフェ街を飛ぶヒョウ柄の蝶々」
  • 茂木健一郎×池上高志「蝶のように遊べ 昆虫のクオリアと動きをめぐって」(対談)
  • 澤野雅樹「腐海に生きる巨大ゴキブリを夢見て」
  • 郷原佳以「自己を/で織る詩 蚕になるデリダ
  • 大庭賢哉「夜の訪問者」(マンガ)
  • 桐谷圭冶「昆虫熱中症
  • 田川研「虫屋がよろこぶとき」
  • 高橋敬一「「よいこ」たちの世界」
  • 久保裕「必読昆虫入門/専門書ブックガイド」(48冊を紹介)


 錚々たる顔ぶれ。これはしばらく楽しめそうである。
 なかでカメムシ関係者としては生態学者の桐谷圭冶氏(甲虫の人でもある)とカメムシ採集人の高橋敬一氏の名があるが、前者の記事の一部に温暖化におけるミナミアオカメムシの分布拡大と、アオクサカメムシとの競合の問題が取り扱われているようだ。
 高橋敬一氏は最近は説教臭いことばかり書いておるな。それはそれで嫌いではないが。


 振り返ってみれば「ユリイカ」が昆虫を扱うのは、これが2度目だろうか。「昆虫の博物誌」(1995年9月)である。先ほど混沌と空虚の中から発掘したので写真を貼っておく。ユリイカの並びではなく、昆虫本の中に並べていたせいで、かえって発見に時間がかかってしまった。余計なことはするものではない。
 もはやバックナンバーとしての在庫は出版社に内容であるが、この号も大変力の入ったものであった。それにしても14年ぶりかー。
 ぜひ今後も続けていってもらいたいものである。

ヨツモンカメムシ

 北方系の大型カメムシのひとつにヨツモンカメムシUrochela quadrinotataがいる。
 「日本原色カメムシ図鑑」に掲載されていないかわいそうなカメムシで、北海道では普通種である。
 クヌギカメムシ科(Urostilidae)というグループに属しており、この科には他に4種が日本から記録されている。



 クヌギカメムシ科には2亜科が知られており、一方のSaileriolinaeは小型種で形態的にもかなり異なるグループらしい。中国や東南アジアに3属が知られていると言うが詳細は不明である。
 日本産のすべてのクヌギカメムシが属するクヌギカメムシ亜科Urostilinaeは、比較的大型で、アジアの南部から東部にかけて分布し、4属約80種以上が知られている。
 近年まとまった研究書が発刊されたが、小生ごときものに手の届く値段ではなかった。



 日本では当初、北大の松村先生が札幌産の標本を元にUrochela jozankeana(定山渓のクヌギカメムシ)として記載したが、上記学名のシノニムとなった。日本のほかに中国の北部及び北東部、朝鮮半島、ロシアの極東部とシベリア東部にも分布している。


 若虫は独特の色模様で、なかなか魅力的である。

オオスズメバチ



 秋の風物詩、オオスズメバチである。
 宅地化が進む中で、比較的山地寄りの生息地を持つオオスズメバチは、キイロスズメバチモンスズメバチなどより、人目に触れ憎いスズメバチとなって久しいが、スズメバチVespa世界最大種としての威厳は失わない。
 そもそもスズメバチは日本に7種が生息しており、その内訳は以下の通りだ(亜種は除く)。


 中でもオオスズメバチは、スズメバチの中でも生態的な地位が最も高く、つまりは食物連鎖の最上位を占める最強のハチであるが、先述のように、環境が現在は味方していない状況である。
 信州の名物珍味クロスズメバチなどは、より小型で属が違う。


 小生だってスズメバチは怖い。
 しかし、一方で言い知れぬ魅力を彼らに感じるのである。爬虫類マニア、それも特に蛇マニアが、最終的に毒蛇に行き着くのと似たようなものかもしれない。
 残念なのは、巣ごと頂くなどという技術も度胸も無いために、女王や雄蜂を標本にできないことである。


 しばらく引きこもっておりました。ご心配をかけた方々にお詫び申し上げます。

ツノアオカメムシ


 今日は北海道にも綺麗なカメムシがいるぜ、というおはなし。
 ツノアオカメムシPentatoma japonica (Distant)である。
 北海道特産というわけではないが、こちらでは平地にまで生息していて見つけやすい。例えば、円山公園などにも普通である。変わったところではススキノで採集された標本を、小生は保有している。
 食草はハルニレ、ミズキ、カエデ、シラカバ、ミズナラなどなどであるが、採集するには灯火を回るのが手っ取り早い。写真の個体も灯火採集で得られたものである。
 体長は2センチを超える大型のカメムシで、非常に立派な印象を与える。
 柑橘類のような、さわやかなにおいを発する、と書くと疑う人もいるだろうが事実なんである。



 よく似た別種にアオクチブトカメムシDinorhynchus dybowskyi Jakovlevがいるが、口針の太さはもちろん。前胸背側角の形状で容易に区別することができる。
 右の標本写真がアオクチブトカメムシである。
 アオクチブトカメムシの側角(肩の部分)がまっすぐ突出しているのに対して、ツノアオカメムシは幅広く、先端が斜めに切れて赤くなっている。体形もアオクチブトカメムシのほうがほっそりしている。


 同様に金属光沢を持つカメムシとして、先日ミヤコキンカメムシ(キンカメムシ科)について書いたが、今回のツノアオカメムシはキンカメムシ科ではなく、カメムシ科に属する。


(撮影:2009年8月26日:円山)

世界最大のセミ


 ご存知の方も多かろうと思うけれど、今宵は世界最大のセミをご覧にいれよう。
 その名もMegapomponia imperatoria。テイオウゼミ(帝王蝉)である。



 東南アジアに分布し、開長18センチにもなる。
 でかければいいというものでもないが、やはり実際に手にすると感慨深いものがある。
 生息地はタイ、ベトナムカンボジア、マレーシア、インドネシア、フィリピンなど。やや小ぶりで黒っぽいものなど、よく似た数種が知られている。
 日本産のアブラゼミの開帳は13センチほどである。
 当然のごとく鳴き声も相当らしく、聞くところによるとトランペットのようだとか。聞いてみたいものである。


 インパクト勝負の何の芸も無い記事であった。